バースキルだけでなくプレゼンテーション能力も問われる。自分の実力を試す絶好の機会です。
大竹 学氏 セルリアンタワー東急ホテル タワーズバー「ベロビスト」チーフバーテンダー。ワールドクラス 2011 世界大会優勝者。

ついに日本のバーテンダーが世界の頂点へ。2011年の世界大会で見事優勝を果たした大竹 学氏に、ワールドクラスへの想い、参加する意義、2012年の参加者へのメッセージを伺いました。

普段の仕事ぶりが丸裸に。自分の実力が客観的にわかる。

ワールドクラスは、日頃のバーテンディングを試す貴重な機会です。自分の実力を客観的に理解でき、しかも世界を狙えます。迷わず参加しようと思いました。とはいえこの大会では普段の仕事ぶりを丸裸にされます。今までは、言葉を論理的にまとめて周りを引き込む会話ができなかった。そのことに気づいて毎日の仕事も変わってきました。お客様に対して、味はもちろん言葉でも美味しさを伝えられるよう、自分自身を変えていったのです。今回、こうした積み重ねが間違いではなかったことを世界で証明することができました。

日本のバーテンディングの良さを見つめ直した準備期間。

ところが、優勝に酔うはずのジャパンファイナルでは衝撃的なコメントに打ちのめされました。「日本のバーテンダーが大切にしてきた丁寧な仕事を忘れている。このままでは世界で勝てない」という辛辣なものです。この言葉が忘れられず、自分の中で3つの目標を設定しました。
1、綺麗で丁寧かつ確実な仕事
2、ホスピタリティあふれる仕事
3、最高に美味しいものを創る
さらに過去の日本代表に審査員のお人柄などを伺い、それぞれに合わせたプレゼンテーションをするよう心がけました。現地では事前にマーケットやレストランで現地の味を確認。フルーツなどは日本と味が違うため「日本のレシピどおりやったら絶対負ける!」と、早めに調整を始めました。味見もいつも以上に気をつけましたね。

旧来の友だちのように世界のバーテンダーたちと交流。

実際に世界のバーテンダーを目の当たりにすると、ものすごく勉強になります。ヨーロッパ勢はプレゼンテーションが抜群にうまく、アジア勢は非常に技術力が高い。その中で日本も注目されているわけです。でもライバル心むき出しというのではなく、「一緒に楽しく創っていこうぜ」という温かい雰囲気。バーで飲んでいても数年前からの友だちのように集まってくる。年齢、国籍、言葉の壁さえも越えて様々な出会いと交流があり、多くの刺激を受けることができました。こうして自分を大きくしてくれたワールドクラスに感謝しています。今後も世界中のすばらしい部分を吸収して、日本のバーシーンを牽引できるような存在となれるよう努力していくつもりです。

笑顔とホスピタリティあふれるサービスを掘り下げて。

これから挑戦する方は、お客様とのコミュニケーションをいっそう大切にして柔軟な対応力、瞬発力を磨くといいでしょう。シンプルな水割りにも情熱をこめて、笑顔とホスピタリティあふれる会話、サービスを掘り下げてください。それから準備と戦略を怠りなく。インターネットで世界のトレンドを把握するほか、ソーシャルサービスなどを利用して情報交換する手もあります。道具や素材も常識にとらわれずに試してみるといいですよ。温めてきたアイディアを発信すればそれがオンリーワンになるかもしれません。2012年の本命がJAPANと言われるように、一緒に日本のバーカルチャーを世界に対して広めていきましょう。