WORLD CLASS 2011 GLOBAL FINAL 普段の仕事ぶり、持てるテクニックと知識が試される6つのチャレンジ

 7月11日〜14日、インド・ニューデリーのインペリアルホテル内に建てられた特設会場にて、32カ国の代表が一堂に会し、ワールドクラス2011 GLOBAL FINALの6つのチャレンジが行われました。けっして奇をてらったパフォーマンスが求められているのではなく、審査員を「特別なお客様」としておもてなしする、普段の仕事ぶりと持てるテクニック、知識が試されていました。

【Asian Food Matching Challenge】スパイシーなフードにあわせて、2種類のカクテルをサーブ。

6つのフードがシェフから提示され、同じグループのファイナリスト達が同時に試食。自分で選んだ2種類のアジアンフードにあったカクテルを各1杯ずつ、その場で創作。カクテルとフードの相性と、クリエイティビティが求められるチャレンジでした。審査員はダニエル・エストレマドイロ氏。彼のアルゼンチンにあるバーはフードと合わせたカクテルが充実していて、審査員としては最適。
フードはスイーツ以外はどれも予想以上にスパイシー。タンドリーチキンにサフランリキュールや、自家製のジンジャーシロップなどを組み合わせたカクテルなど、各ファイナリストともに、随所にアジアを意識した工夫がみられました。カクテルを主役にする難しさに誰もが頭を悩ませていたようです。

【Theatre and Stars Challenge】ブランドを深く理解し、求められる、飲みたいと思わせる演出。

 世界的に著名なバーテンダー ピーター・ドレッリ氏が審査員を務めるこのチャレンジは、儀式や演出を取り入れたサーブでブランドを紹介し、「飲みたい」とお客さまに思ってもらうというもの。
 カクテルサーブでは、“ディーバ”と呼ばれる女性スターを自分で設定し、彼女にインスパイアされたカクテルを創作。日本代表の大竹氏は、阪神大震災や今回の震災の中でも来日して日本に勇気を与えてくれたシンディー・ローパーの心や、ファッション、愛などをカクテルで表現。
 ボトルサーブでは、スピリッツそのものをどのように紹介し、魅力的に提供できるかを、ボトルを使って表現。民族衣装を身につけたり、特別な道具を使ったりと他のチャレンジでは見られない独創的なプレゼンテーションが行われました。

【Classic, Vintage and Twist Cocktail Challenge】きれいで、丁寧なサーブ。普段の仕事ぶりが試されるチャレンジ。

 日本人の審査員 上野 秀嗣氏が審査を行うこのチャレンジ。12種類のクラシックカクテル、ビンテージカクテルの中から審査員のオーダーしたもの一種類ずつをブランドやカクテルの背景の説明を交えながらサーブしていました。
続いて行われたツイストカクテル。これは、12種類のカクテルの中から自分で一つ選んで、ツイスト(変化)させるというもの。ツイストの手法は全くの自由でしたが、どうツイストしたのか、その手法と理由もしっかりと説明しなければいけない。材料を替えたり加えたり、普通であればシェイクで作るカクテルの作り方を変えたり、食べるカクテルなども登場し、各国のファイナリストが思い思いの解釈で“ツイスト”を行っていました。日本人の審査員ということで、特に『きれいで丁寧な仕事ぶり』が求められ、ファイナリスト達も緊張感を持ってプレゼンテーションを行っていました。


【Asian Spice Market Challenge】与えられた条件の中で、いかに独創的なカクテルを提供できるか。

 審査員は“マエストロ”と呼ばれるサルバトーレ・カラブレーゼ氏。会場にはインドのマーケットが再現され、豊富に用意された野菜、フルーツ、ハーブ、スパイスなどを自由に使って2種類のカクテルを創作。材料の種類だけでなく、状態、組み合わせた時の相性など、その場のインスピレーションで、オリジナリティあふれるカクテルを創ることが求められました。
  プレゼンテーションが終わるたびにそれぞれのファイナリストに、丁寧に感想やアドバイスを伝えるサルバトーレ氏。そのコメントは、時にはかなり辛辣なものとなっていましたが、“マエストロ”から直接アドバイスをもらえる貴重な時間に、どのファイナリストも真剣に耳を傾けていました。


【Cocktails Against the Clock】創るカクテルの種類、数、技術など事前の戦略が重要なチャレンジ。

 デール・デグロフ氏が審査員を務めるチャレンジ。JAPAN FINALと違い、世界大会では各自好みのカクテルを6分のプレゼンテーション時間内に自分で作るこのチャレンジ。どんなカクテルを何杯作るか自分で選ぶことができ、最低2種類、最大5種類作ることが可能ですが、簡単なカクテルばかりをたくさん作っても高い評価は得られない。単にスピードを競うのではなく、種類と味、テクニックをどのように審査員にアピールするか、事前の戦略が重要。使い慣れていない道具を使って、予定のカクテルを全て作り終えることができず、大汗をかいているファイナリスト。かと思うと、5杯のカクテルを完璧なまでに仕上げてデグロフ氏に絶賛されている人も。いかに平常心で、カウンターに立つことができるか、普段どおりの仕事ができるかが大切だということを、誰もが痛感していました。


【Gentleman's Drinks and Fancy Tipples】スピリッツやカクテルに関する知識、テクニックが試される。

 ガリー・レーガン氏が審査員を務めるチャレンジ。
「Gentleman’s Drinks」と「Fancy Tipples」という二つのテーマに合わせたカクテルを創作。「Gentleman’s Drinks」とは、19〜20世紀の社交クラブの伝統をベースとした、紳士がフォーマルな場で飲むにふさわしい飲み物。このチャレンジで部門優勝した台湾のマーク・ハン氏は、ラムを普通の氷とドライアイスと一緒にステアしたのち、高い位置からグラスに注ぐ、ネグローニをアレンジしたカクテルをサーブ。シンプルながら、スピリッツの特長を引き出すその手法にレーガン氏も大きくうなずいていました。
  「Fancy Tipples」は、華やかで贅沢、そしてクリエイティビティあふれるカクテルのことを指し、大竹氏が披露したのはJAPAN FINALでもサーブしたウイニングカクテル「ブランネージュ」。シロックのボトルイメージや原料のぶどうの生産地をイメージしたプレゼンテーションは、ひとつの物語になっており、審査員だけでなく、会場中を魅了していました。
  また、スピリッツのカテゴリーとカクテルに関する筆記試験、ブラインドテイスティングで、知識と味覚も試されました。


世界大会優勝者 大竹 学氏レポート

3年越しの想い、ついに世界の頂点へ。日本代表 大竹 学氏、ワールドクラス2011世界大会優勝。

 JAPAN FINALから1カ月の準備期間を経て行われた世界大会では、大竹氏のプレゼンテーションが常に話題の中心となっていました。ワールドクラスが世界大会となってから3年。初年度から挑み続けて悲願の世界大会出場となった大竹氏は、その勢いのまま世界No.1の座をつかみ取ることとなりました。
  なによりも評価が高かったのは『きれいな仕事ぶり』。プレゼンテーションをする前に、カウンターやボトルをきれいに拭いていたことに、チャレンジ終了後、審査員がわざわざ声をかけてきて、「君のプレゼンテーションは素晴らしかった。日本のバーテンダーは素晴らしい」と最高の賛辞を贈っていました。大竹さんご自身、『きれいで丁寧かつ確実な仕事』、『ホスピタリティあふれる仕事』、『最高に美味しいものを作る』この3つを常に肝に銘じて、全てのチャレンジに臨んでいらっしゃいました。
  特に評判となっていたのが、Theatre and Stars Challengeのボトルサーブ。浴衣を着て日本を意識したプレゼンテーションでは、ヒノキのウッドチップを火であぶってジョニーウォーカー ブルーラベルをそこに通し、日本酒升でサーブしてゆずパウダーと和三盆のミックスしたものと一緒に飲んでもらうサービングを行いました。このプレゼンテーションに、審査員を始め会場中の人々が感動し、テイスティングの奪い合いとなっていました。

 最終日、Gentleman’s Drinks & Fancy Tipplesで披露したシロックを使った「フロム・インディア・ウィズ・ラブ」は、映画007のエピソードとインドを組み合わせたストーリーで審査員のガリー・レーガン氏を話とプレゼンテーションに引き込み、『特別なお客様をもてなす』というバーテンダーとしての仕事を実に完璧にこなしていました。
  大会期間中、ファイナリスト、審査員、ゲストなど立場に関係なく、言葉の壁を越えて交流が図られたワールドクラス。その様子はまさに大会のコンセプトである“Raising the Bar”にふさわしい、バーテンダーとバーカルチャーの向上を図りたいという思いを同じくする同志たちの集まりでした。大会セレモニーで、6つのチャレンジや大陸ごとの優勝者が呼ばれるたびに、互いの栄誉をたたえあい、我がことのように喜ぶファイナリスト達。そして最後のチャンピオンとして大竹氏の名前が呼ばれた瞬間、会場中が歓喜の渦となり、誰もが大竹氏のもとに祝福に訪れました。3年間、このワールドクラスにかけた自身の想い、日本のバーテンダー仲間から託された想い、そしてここまでの努力が走馬灯のようによぎったであろう大竹氏は、祝福の嵐の中、感無量の表情を浮かべていました。