プロが緊張する、世界大会を意識した3時間。

世界チャンピオンによる日本を意識した粋なパフォーマンス

 浴衣にタスキがけで颯爽と登場したのは大竹 学氏。世界大会で着用したもので、タスキの赤は日の丸をイメージしています。本番同様20分の制限時間を設け、「Theatre and Stars Challenge」のデモを開始。
 まずは“ディーバ”と呼ばれる女性スターをモチーフにしたカクテルサーブから。大竹氏は震災後の日本を勇気づけたシンディー・ローパーの魅力を表現。「スパイスの効いたワクワクした香りが彼女に通じる」と、ロン サカパ(ラム)をベースに選び、畳のコースターやハート型のガーニッシュなども用いたチャーミングな一杯を完成させました。
 そして次のボトルサーブでは、日本をより強く意識させるプレゼンテーションを。これはバーナーであぶったヒノキのウッドチップにザ シングルトン グレンオード(シングルモルトウイスキー)を通し、一升枡からひしゃくでシェアするというもの。盛塩がわりに柚子パウダーと和三盆のミックスも添えて。その上、風鈴を吊るし、扇子で風を送りながらサーブ。シングルトンの2つの樽香にマッチしたヒノキの香りをはじめ、五感を快く刺激する仕掛けは世界大会でも絶賛の嵐でした。

ツイストを含む5種のカクテルを、わずか6分で。

 ジェイミー・マクドナルド氏は「Cocktails Against the Clock」「Asian Food Matching Challenge」を再現して鮮やかにパフォーマンス。前者はわずか6分で3〜5種のカクテルを仕上げるチャレンジ。スピードはもちろんですが、不慣れな場所でも一つひとつの手順をきちんとこなすことが求められます。氏は「なるべく両手を使うのがコツ」と言いながら、3種のクラシックカクテルに加えて「アプリコットとミントのジュレップ」など2種のツイストカクテルを仕上げ、世界3位の貫禄を見せつけました。
  フードマッチングでは、スパイスの効いたエビとマンゴーチャツネのカナッペに合わせた洋梨のカクテル「ペア&バニラダイキリ」を披露。インドのシェフからインスピレーションを得られたと語りながら、制限時間の5分ちょうどでサーブ。フードマッチングはこの後のインタラクティブセッションの課題でもあり、ヒントを得ようと参加者の試飲が続きました。

グローバルジャッジが語る世界大会に臨む心構え。

 今回のセミナーでは、上野 秀嗣氏が講演する「ワールドクラス世界大会に臨むための心構え」、そしてインタラクティブセッションにおける氏の審査も注目されました。各チャレンジに臨むポイントなども解説があり、参加者が熱心にメモをとる姿が見られました。
  講演で「求められていることを理解していない人が多い」と、ワールドクラスの本質について語ることから始めた上野氏は、審査員を特別なお客様としてどうもてなすのか、普段の仕事ぶりを見せる重要性を強調。トレンドの後追いを戒め、ブランドを熟知した上でオリジナリティを出すことなどを語った上で、「美味しいカクテルをきれいに優雅に創る日本のバーテンディングは世界でも評価されています。日本のバーテンダーであることを意識して、力を発揮してほしい」と参加者を激励しました。
  厳しくも温かい言葉に、あらためて気を引き締め、また戦略を練り直した参加者も多かったのではないでしょうか。

精鋭たちが切磋し、交流するインタラクティブセッション。

 何が求められているか。この視点はグループで作業するインタラクティブセッションの審査にも反映されます。課題フード(東京会場では「熟成スモークポークのリエットとバケット」)とドリンク双方の期待感をより高め、ブランドのイメージをさらに広げるカクテルを30分で創作していきます。

 「カクテルでポークの脂を洗い流します、というのではダメ」と上野氏。傍観者の存在も許されません。しかし昨年のファイナリストも含む60人の精鋭によって行われたセッションはさすがにレベルの高いもの。15種のスパイスや16種のビターズ、フレッシュハーブや塩麹といった多くの素材を自在に駆使し、アイデアを出し合いながら作品が展開されました。上野氏も一つひとつを丹念に飲み比べ、プレゼンテーションに耳を傾けていました。このセッションは、自分や他者のレベルを客観視するとともに、参加者同士が交流するきっかけにもなったようです。
  こうした密度の濃いセミナーの最後に、世界大会でも行われるブランドクイズで知識を試された参加者たち。この中から上位10名が選出されます。求められるものに柔軟に応えながら、発想豊かに表現した者が勝つ。すぐそこに迫った6月のJapan Finalに勝ち残るべく、誰もが闘志を燃やしていました。