


日本のカクテルコンテストとはまったく違い、そのスタイルや参加者たちの実技を目の当たりにしてカルチャーショックを受けました。参加してみて感じたのは、世界のバーテンダーたちの技術の高さ。現地に行くまでは日本の技術はトップレベルという自負もありましたが、海外の選手は日本の技術もしっかり学びつつ、世界中のバーテンディングの良いところをどんどん取り入れて、自分を常に向上させることに貪欲なんです。
日本のバーテンダーは職人のようなもので、極上の一杯に仕上げるその過程をお客様に見ていただかなくても、裏できっちりとした仕事をこなす。世界のバーテンダーはその過程まで含めてお客様にお見せしてアピールし、楽しんでもらう。職人の技も学んだエンターテイナーというところでしょうか。バーテンダーとしてのオリジナリティと魅せる技をどう一杯のカクテルに凝縮するか。それをみんなよく研究していました。優勝したエリック氏はたたずまいに華もあり、歌舞伎の見得を切るような見せ場をきっちり織り込んでいた。しかも、技術レベルも高い。「エリックが優勝するかも」と思いました。


大会への参加はすべてが新鮮で、今までにはない刺激を大いに受け、情報を吸収する良い機会でした。英語はほとんど話せないのですが、思い切って話しかけてみると気持ちが通じ合い、道具の貸し借りや他のチャレンジの情報などに快く答えてくれました。帰国後は世界大会参加者とコミュニケーションサイトでやりとりし、情報交換を行っています。世界の情報を聞き出すだけでなく、自分自身も新しい試みをYouTubeにアップするなど、国境を越えた仲間との交流が、以前の自分では考えられなかったような変化をもたらしました。
『ワールドクラス』 では、お客様の視線を自分の世界にグッと引きつけるようなプレゼンテーション力が必要。また、今まで使っていなかった道具や技術、披露してこなかったアイデアにトライしてみるチャンスでもあります。自分が世界の舞台で最高のカクテルをつくるために武器となるものは貪欲に身につけておくべきです。
『ワールドクラス』の世界大会は審査員との距離がとても近く、まさに日常を切り取ったような空気です。普段お客様に対面しているときの気持ちを忘れず、今持っている技術を研ぎ澄まし、プレゼンテーション力を高め、自分のオリジナリティで審査員を巻き込むことができれば、必ずや良い結果がついてくると思います。
