〜World class Bartender of the year 2010 への挑戦〜
世界中から集まる高い技術をもったバーテンダーの祭典、ギリシャでクライマックスを迎える。

全世界24カ国から9,000人以上のバーテンダーが参加し、約半年の長きにわたって競われてきた『ディアジオ ワールドクラス カクテルコンペティション 2010』。その頂点を決めるべく、去る7月12日〜15日までの4日間、各国の予選を勝ち抜いてきた精鋭24名がギリシャ・アテネで一堂に会し、世界大会が開催された。今大会では、参加者の意気込みに昨年以上のものが感じられると同時に、前大会での経験や情報共有を活かし、事前準備から演出にいたるまで随所にレベルアップがみられた。また、各国メディアの注目も今まで以上に集め、スケールアップした大会は成功のうちに幕を閉じた。

全方位から実力を試される、6つのチャレンジに挑む。

 選手に課せられたのは、限られた時間のなかでおこなう6つのチャレンジ。地元のスーパーに並ぶ食材から発想し、材料の購入からオリジナルカクテルの創作とプレゼンテーションまでを行う「マーケットチャレンジ」、用意されたカナッペとマリアージュするカクテルを創作する「フード(カナッペ)マッチング」。こうした即興力が求められるものと、予め課題が与えられたものに対して知識、感覚、技術力が試される「クラシックカクテルズ」や「カクテルマスタリー」など、その内容と審査方法は多岐におよんだ。また、カクテルとボトルサーブそれぞれでブランド演出を行う「リチュアル&カクテルシアター」では、副材料から使用する器材などはすべて選手が持ち込み、細部にいたるまで演出に対する強いこだわりが感じられた。

評価の対象として重要視される、プレゼンテーション能力。

 競技中、審査員はお客さまとして設定されているため、各チャレンジ前に行われる10分間のオリエンテーションで審査員の要求や要望をしっかり掴むこと=お客さまを知ることが重要なカギとなってくる。また、創作したカクテルの完成度と同様に評価対象として重要視されたのが、プレゼンテーション能力。自分が意図したことをいかに論理的かつ魅力的に伝え、”お客様を楽しませるか”というもので、普段からこうした意識をもってお客様に接しているかどうか、その違いに差がでた感があった。また、日本のバーテンディングの技術力は、世界の中でいまだ高い水準にあるとはいえ、「近年では他国の技術力も高くなってきている」といった審査員のコメントも。高度な技術のうえに楽しませる演出とプレゼンテーションの能力と、バーテンダーに求められるものは年々幅広くなってきている。

活発に行われた選手間の交流、審査員からは直接アドバイスも。

 審査員として招聘したのは、デイル・デグロフ氏、サルバトーレ・カラブレーゼ氏、ピーター・ドレッリ氏、ガリー・レーガン氏、アルベルト・ソリア氏、上野 秀嗣氏の6人。選手からは「超一流の、神様のような存在の人たちを前に、競技ができるのは光栄」といった声も聞こえた。
 厳しい審査が行われる一方で、競技の合間に審査員から選手へ前向きなアドバイスがなされるといったシーンも。選手の作品に対して「すばらしい!」「こんな味に出会ったことがない!」と絶賛、選手に詳しくレシピを聞いたり、審査員自ら作品を写真に収めるといった光景も見受けられた。そこにあったのは一方的に審査する、される関係ではなく、バーカルチャーの輪の中に等しく生きる一員として、自然体でコミュニケーションを深めていこうという空気感。カクテルを通じて愉しもうという気持ち。これもワールドクラスならではの魅力といえる。また、各チャレンジは4人ずつのグループに分かれて行われ、さらに毎日グループメンバーがシャッフルされたこともあり、選手間の交流も活発に行われた。

世界No.1に輝いたのは、ロンドンのエリック・ロリンクス氏。

 最終日に表彰セレモニーが行われたのは、神殿を模した美しい会場「ザッペイオン」。選手が会場入りする直前、ブランドアンバサダーのスパイク・マーチャント氏が「世界の多くのバーテンダーの中で、皆さんがこの場に立てたことはすごいことなんだよ」と声をかけると、4日間の熱い闘いを振り返り、感極まって号泣する選手の姿も見られた。日本代表の渡辺 匠氏も「鳥肌がたった」とそのときのことを語る。
 『ワールドクラス バーテンダー オブザイヤー2010』の栄誉を得たのは、ロンドンのエリック・ロリンクス氏。日本の高い技術を習得するため、銀座の有名バー数店でもカウンターに立った経験をもつ等、さまざまなカクテル文化に触れてきた人物で、今大会でも圧倒的な技術力と演出を披露。今後の活躍が期待される。
バーカルチャーの醸成と発展を。そして、バーテンダーのコミュニティ創造を。
—RAISING THE BAR—今年のカクテルの祭典は幕を下ろした。

日本代表 渡辺 匠氏のコメント

 ギリシャでのワールドクラスはあっという間の体験でした。私の日本でのバーテンダースキルを、世界の有名バーテンダーに審査していただけた、とても貴重な体験でした。
正直、世界各国のバーテンダーのプレゼンテーションには驚かされました。彼らはお客様を楽しませ、そして魅力的なカクテルの世界に引き込む技術を持っています。実際、「クラシックカクテルズ」では「ワタナベの顔は怖いよ」と、ジャッジのサルバトーレさんに指摘を受けました。日本人のまじめな顔つきは、世界大会ではシリアスにうつってしまいます。カクテルコミュニケーションとは楽しいものであるべきなんです。
細やかな技術では、おそらく日本は自慢できそうです。ただ世界のバーテンダーが、さまざまな機会を通して日本のバーテンダーの技術を習得しはじめています。今度は私達日本のバーテンダーが世界のプレゼンテーションを学ぶべきかもしれません。
  また、ワールドクラスに使われる対象ブランドへの理解力も必須です。各ブランドの歴史や背景、そして作り手の思いを知る必要があります。それらを一杯のカクテルに表現するのが私達バーテンダーの仕事です。
現在このワールドクラスは世界でとても知られた大会になってます。世界各国のメディアの扱いも特別です。今後ますます大きくなるであろうこの大会に私も参加できて、本当に感謝しています。
貴重な体験と出会えた世界のバーテンダーとディアジオスタッフの皆様に改めて御礼申し上げます。「ありがとうございました」

THE SAILING BAR 渡辺

総合優勝

Erik Lorincz , The Connaught, London, United Kingdom

2位

Do-Hwan Eom, The Ritz Bar, The Ritz-Carlton, Seoul, Korea

3位

Max La Rocca, Sheen Falls Lodge Relais & Chateaux, Kenmare, Co. Kerry, Ireland

<各部門優勝者>

Canape Matching

Jordi Otero, Mandarin Oriental, Barcelona, Spain

Market Challenge

Do-Hwan Eom , The Ritz Bar, The Ritz-Carlton, Seoul, Korea

Ritual & Cocktail Theatre

Max La Rocca, Sheen Falls Lodge Relais & Chateaux, Kenmare, Co. Kerry, Ireland

Speed & Taste

Heinz Kaiser, DINO’S American Bar, Vienna, Austria

Classic Cocktails

Timo Janse, Door 74, Amsterdam, Netherlands

Cocktail Mastery

Torsten Spuhn, Modern Master Bar and Lounge, Erfut, Germany