ジャパンファイナル

日本大会優勝者(敬称略)
倉上 香里(BAR HIGH FIVE/東京都)
総合第2位・3位受賞者(敬称略)
第2位茂内 真利子(The Bar Rose Garden/青森県)
第3位槇永 優(Bar Leigh Islay/大阪府)
Challenge Winner(敬称略)
Signature Cocktail Challenge倉上 香里(BAR HIGH FIVE/東京都)
Classic Challenge倉上 香里(BAR HIGH FIVE/東京都)
Omotenashi Cocktail Challenge門間 輝典(札幌プリンスホテル スカイラウンジ Top of PRINCE/北海道)
Speed Challenge宮﨑 理彦(The FLAIR BAR/栃木県)

世界大会への挑戦権を賭けた第6回目の優勝者はBAR HIGH FIVE倉上香里氏に決定!トップクラスのバーテンダー10名が激闘を繰り広げた、ジャパンファイナル。

バーの文化と価値を高め、バーを通じてお酒の楽しさや素晴らしさを伝える
“RAISING THE BAR” というコンセプトのもと生まれた、ワールドクラス。
6年目を迎える今年の世界大会は、英国が舞台。
スコッチウイスキー発祥の地から始まり、最新カクテルトレンドの発信源・ロンドンでフィナーレを迎える。
その世界大会への挑戦権を賭けて、熾烈な予選を勝ち残ってきた10名のバーテンダーが集結した、
「ワールドクラス2014ジャパンファイナル」。
決勝の舞台にふさわしい世界標準のクラブ&レストラン「ビルボードライブ東京」で、
バーテンダーの技量を試す4部門の審査が行われた。
そして今年からは、審査員・関係者だけでなく、一般の方も会場で観ることができるように。
素晴らしいパフォーマンスには大きな歓声や割れんばかりの拍手が巻き起こる、過去最高に熱い2日間となった。
Signature Cocktail Challenge名刺代りの一杯を。自分を象徴するカクテルとは?
自分自身を象徴しているカクテルを披露するSignature Cocktail Challenge。まさにバーテンダーの挨拶代わりとなる、最初の勝負にふさわしいチャレンジだ。10人の挑戦者は、シロック(ウオッカ)、タンカレー ナンバーテン(ジン)、ドン・フリオ(テキーラ)、ジョニーウォーカー ゴールドラベル リザーブ(ウイスキー)をベースに、自らのルーツやアイデンティティを表現した渾身の一杯を創り上げる。
この部門の勝者は倉上香里氏(BAR HIGH FIVE)。カクテル名はThe Age of Great Navigations、大航海時代という意味だ。「圧倒的な海軍力で世界を牽引していた頃のイギリスがイメージ」で、シロックをベースに、ハチミツ、ドライシェリー、卵白、オリーブオイルとレモンジュースの特製フレンチドレッシングといった様々な要素を、丁寧かつ繊細な手さばきで次々にミックスしていった。ひとつひとつの行為に無駄がなく、スローイングは「高い位置から注ぐことで、薫り高くまろやかな口当たりになる」ため、「シロックの柑橘系の爽やかな風味を損なわないように」とレモンの花のハチミツを選択。そして、飲み手への配慮も忘れない。白波にみたてた泡の上に艦船のミニチュアを配置し、フィニッシュ。気品のある装いの一杯に、審査員も満足げな表情を浮かべていた。
Classic Challenge技術、知識、創造性。伝統的なカクテルで“対照的な2杯”をサーブ。
このチャレンジは、ステージ上に置かれたカードから一枚選び、そこに書かれているクラシックカクテルを即興で作るというもの。しかも自分なりの変化を加えた2種類のツイスト・カクテルを用意しなければならないのだが、流石は厳しい予選を勝ち抜いてきた10名のファイナリスト達。ネグローニ、アフィニティ、バラライカ、モスコミュールといった定番カクテルでも、見事に対照的な2杯を完成させていった。
ひとつめのチャレンジのウィナーである倉上氏に課せられたカクテルは、テキーラとカシスがベースのエル・ディアブロ。「今年の夏はサッカーでブラジルが熱いので、一杯目はトロピカルなエル・ディアブロを」ということで、バニラの甘い香りが特徴のドン・フリオ レポサドをチョイス。そこにライムと生しょうがでフレッシュさとスパイシーさを加え、口の部分が広いゴブレットグラスで華やかなカシスレッドのカクテルが完成。「現実からの大脱走、バカンスに向かうイメージでゲッタウェイと名付けました」。2杯目は、コクと深みのあるドン・フリオ アネホを選択。ギネスビールによるダークレッドが印象に残る仕上がりから、中世ヨーロッパの悪魔の名を借りてメフィストフェレスと命名。結果、エル・ディアブロで見事なツイスト・カクテルをサーブした倉上氏が、このチャレンジでも勝利を勝ち取った。    
Omotenashi Cocktail Challenge様々なお客様のオーダーに答える、“おもてなし”の一杯を創作。
「自分のバーに来たお客様が、こんなオーダーをしたらどんなカクテルを作る?」 おもてなしの心が試される、Omotenashi Cocktail Challenge。「昇格したビジネスパーソンへのお祝い」「初デート前の緊張をほぐしたい」「いつもはワインしか飲まないけど、今風のカクテルが飲みたくなった」「本のエンディングが浮かばない小説家のために」「初の日本旅行の想い出として」「息子を初めてバーに連れてきた父親」など、ユニークな設定が次々と登場した。
このチャレンジのウィナーは「これから彼女の両親と初めて会います。彼女の怖いお父さんに負けない強い一杯をお願いします」というお題に、ユーモアを交えて応えた門間輝典氏(札幌プリンスホテル スカイラウンジ Top of PRINCE)。お父さんということでドン・フリオ レポサドをベースに「お父さんには負けていいと思うんです。お父さんと仲良くなれるような、お互いが笑顔になれるような一杯をつくります」という独自の解釈で、ドン・フリオと相性のいいライムジュース、「お父さんと“うめえ”関係になれれば」と梅酒、そして「うまく収まるように」と丸みを帯びたグラスをチョイス。カクテル名は「KISS TO PAPA」。大人の酸いと甘いが交差した一杯で見事勝利を掴んだ。
Speed Challenge6種類のカクテルを8分以内で作れるか。味、見た目も評価ポイント。
そして最後のステージは、6種類のスタンダードカクテルをなんと8分以内で作り上げるSpeed Challenge。毎年、バーテンダー達の息を飲むようなパフォーマンスが繰り広げられるため、人気の高いチャレンジだ。作り方は正に十人十色、ひとつひとつ丁寧に仕上げる人もいれば、同時並行で仕上げていく人も。定番カクテルながら、仕上がりもバーテンダーそれぞれの個性が出た非常に興味深いものとなった。
また評価ポイントは、スピードだけではなく味や見た目、作っている最中のコミュニケーション能力も含まれる。時間とクオリティ、様々な技術が試され、見ごたえのある8分が繰り返された。

そんな中、会場からひときわ大きな歓声を浴びてこのチャレンジのウィナーとなったのが、宮﨑理彦氏(THE FLAIR BAR)だ。まずはカウンターに整然とグラスを並べ、見事な手さばきで次々とカクテルを完成させていく。日頃バーで培った経験のなせる業か、リミットが近づいても慌てるそぶりは全くなく、クールかつマイペースな佇まいは一切崩さない。それでいて正確なその一挙手一投足には、余裕や優雅さも感じられた。そして、8分ジャストで6つの色鮮やかなカクテルが完成した瞬間、宮﨑氏自身も勝利を確信したのか力強いガッツポーズをみせた。
そして、2日間にわたる熱戦は幕を閉じた。
日本大会優勝者は、Signature Cocktail ChallengeとClassic Challengeの2部門を制した倉上氏。発表の瞬間は嬉しさよりもまずは驚きの表情を浮かべ、徐々に実感がこみ上げてくると目に涙を浮かべながら、声を震わせながらゆっくりとスピーチを始めた。
「このような大きな舞台で賞を頂いて、嬉しく思います。この結果をまずは(バーの)マスターに伝えて、そして今日もすぐに仕事に戻りたいと思います。」
バーが、お客様が、私を育ててくれた。
7月の世界大会でも、そのホスピタリティは、世界中の審査員をきっと満足させてくれるはずだ。